2026年8月、高山市八軒町に宿泊機能を備えたコワーキングスペース「ensō〈エンソウ〉」をオープンしました。場所は銭湯「稲荷湯」の向かい、木造の古い町屋です。
私は2018年に、夫の都合で東京の仕事を離れて高山に移住しました。
来たばかりのころ、この街に知り合いは一人もいませんでした。高山にはコミュニティがいくつも根付いています。ただ、外から来た人間には、どれも入り口が見つけられませんでした。リモートで東京の仕事を続けながら、誰とも話さない日が何日も続く。移住したての日々は、思っていたよりずっと孤独でした。
転機をくれたのは、当時宮川沿いにあったコワーキングスペース「co-ba」でした。

仕事をしに行っただけの場所で、隣の席の人と言葉を交わすようになり、そこから人を紹介してもらい、仕事の種が生まれました。東京の会社を辞めて独立する踏ん切りがついたのも、あの場所があったからです。
地域で活動する人とよそから来た人が心地よく混ざる場所が、私の最初の挑戦を支えてくれました。
才能はいるのに、出会う場所がない
独立してからは、デジタル支援の仕事を通じて、たくさんの地元のプレイヤーの力を借り、すばらしい企業との出会いを重ねてきました。そのたびに思うのは、この地域には驚くほど多彩な才能を持つ人たちがいる、ということです。
それなのに、その人たちが一堂に会して、互いの顔と仕事が見える場所がありません。だから地元の会社に頼みたい仕事があっても、誰に頼めばいいかが分からない。結果として、仕事は市外へ流れていきます。働く側も同じです。腕のある人ほど都市部の案件で食べていて、地域との接点を持ちたくても、きっかけがないままになっています。
2022年にco-baがクローズしてから、高山にはあの「仕事を通じて混ざる場所」がないままでした。それなら、今度は自分が作る番だと思いました。
働く、泊まる、混ざる
ensōは、コワーキングスペースであり、3室だけの宿でもあります。
地元で働く人の日々の仕事場でありながら、高山で働いてみたい人が数週間から数ヶ月、暮らすように滞在できる場所です。
人をつなぐ役のコミュニティマネージャーたちが常駐していて、話したい日には誰かを紹介してくれます。一人で過ごしたい日は、そのままで構いません。
人が混ざる場所をつくれば、埋もれている才能が浮かび上がる。ここで新しい仕事が生まれれば、地域の仕事は地域の中で回りはじめる。それは高山で働くすべての人の追い風になるはずです。
そしてこの場が、これから高山の門を叩く誰かの最初の挑戦を、応援できる場所であってほしいと思っています。